アトランティック・リーグ

Richmond County Bank Ballpark (Staten Island, NY)
Clipper Magazine Stadium (Lancaster, PA)
PeoplesBank Park (York, PA)
Appalachian Power Park (Charleston, WV)
Fairfield Properties Ballpark (Central Islip, NY)
 

スタテン・アイランド・フェリーホークス
球場:リッチモンド・カウンティ・バンク・ボールパーク
所在地:ニューヨーク州スタテン・アイランド
開場:2001年
収容人数:6,686人

photo by 球場巡礼

 元々はニューヨーク州のウォータータウンから移ってくるヤンキース傘下のショート・シーズン・シングルAのチームのために建設された球場だが、2020年のオフに断行されたマイナーリーグの再編でMLB傘下からはじき出されてしまい"Staten Island Yankees"は廃業に追い込まれてしまった。2021年は空き家となっていたが、翌2022年にインディペンデントのアトランティック・リーグの新チームが入居してくることになりなんとかプロフェッシナル・ベースボールの世界に留まることが出来た。
 設計はあのHOK(現ポピュラス)。観客動員や人気面ではは同時期にデビューしたブルックリンの後塵を拝してはいるが、球場から見える景色などを含めたトータル的な美しさはコッチの方が上。全席オーシャンビューの上、外野フェンスの向こうをゆっくりと航行する貨物船が見えたりライトアップされたマンハッタンのスカイラインが見える野球場なんて世界でここだけでしょう。外観は20世紀初頭の町並みを思わせるようなレンガ造り。メインゲートをはじめ各ゲートを飾っている大きなセイル(帆)はこの球場のチャームポイントで、球場建築的には何の意味もないがウォーターフロントの風情を感じさせる。球場のインテリアはホワイトやブルーを基調としていて清潔でさわやかな印象。スタンドのグレードはダブルAクラスでも十分まかなえそうな規模だ。両翼のポール際まではオープン・コンコースだが、残念ながら外野に観戦スペースはなく行き来もできない。マンハッタンでひと儲けした連中が好みそうなスイートがズラリと並んだ2階席へは一般人は立ち入れない。この球場のオープン当時からの名物だった外野のピカピカ光るLED広告はさらにアップグレードされ、現在では右中間の外野フェンス全体を覆う大きなものになっている。陽が沈むと暗闇に浮かび上がる広告はイヤというほど目立つが、いかんせん、広告主がローカルなので見慣れない企業が多い。1塁側のコンコースには世界でここだけにしかないベースボール・スカウトの殿堂があるので気になる人はどうぞ。
行き方:マンハッタンの先っぽに浮かぶスタテン・アイランド(正確には島ではなく陸地の一部だが)へは地下鉄@の終点South Ferry駅、あるいはN, R, W線のWhitehall Street/South Ferry駅から接続できるStaten Island Ferry を利用。所要時間は約30分で運賃はタダ。しかも途中で自由の女神を間近に見る事ができてしまう。フェリーは24時間動いているので安心だが、深夜になると1時間に1本になるので注意。ミッドタウンからは1時間ほどみておいたほうがよいだろう。球場へはフェリー・ターミナル「セント・ジョージ」から徒歩5分。フェリーを降りてサイン通りに進めばOK。
観戦したゲーム(2):
2003.07.12 SS-A New York-Penn League : Staten Island Yankees vs. Tri-City Valleycats

2008.07.04 SS-A New York-Penn League : Staten Island Yankees vs. Mahoning Valley Scrappers

ランカスター・バーンストーマーズ
球場:クリッパー・マガジン・スタジアム
所在地:ペンシルヴェニア州ランカスター
開場:2005年
収容人数:6,200人

photo by 球場巡礼

 ランカスターはAAイースタン・リーグの"Lancaster Red Roses"が撤退して以来なんと44年ものあいだマイナーリーグ空白地帯だった。レッド・ローゼズは所属するリーグが変わったり途中何シーズンかのブランクはあるものの、1940年から1961年まで21年間も活動を続けていた伝統あるチームで同じ時期に隣町のヨークを本拠地としていた"York White Roses"とのライバル関係は有名だった。現在のチームは2005年に立ち上げられた全く別の球団だが長らくベースボールに飢えていた市民から熱烈に歓迎された。ニックネームの"バーンストーム"とは20世紀初頭、本拠地を持たずに全米各地の町をドサ回りしていたスポーツ興業のことで、ペンシルヴェニア州南東部では特にニグロ・リーグなどの野球の興業がさかんに行われていたらしい。新チームの名称を決める際には伝統のレッド・ローゼズも候補に挙がっていたが復活はならなかった。しかしレッド・ローゼズのチームカラーであるえんじ色は新チームにしかと受け継がれている。
 球場はチームの立ち上げと同時に2005年にオープン。ネーミング・スポンサーの「クリッパー・マガジン」とは日本の「ホットペッパー」のような冊子で割引クーポンが付いている無料のマガジン。球場はリーグの他の新規参入チームと同じくダブルA規模の立派なハコで、初年度からコンスタントに1試合平均5,000人以上のファンを集めている人気の優良球場である。造りは非常にオーソドックスだが、鉄骨で組まれてた照明灯や広範囲にわたる2階席(全てスイート)、ペンシルヴェニアの伝統的な赤煉瓦をふんだんに使った一見ウェアハウス風のメイン・エントランスなど、しっかりディテールまでお金をかけて造ったのがわかる好物件だ。特にファミリーを楽しませるための娯楽が充実しており、レフトのポール際には本格的なメリーゴーラウンドが、センターには芝生席がない代わりに"Home Run Harbor"と呼ばれるボート遊びができる人工池がある(スタンドからは見えないが)。これらのスポットは試合前からキッズやパパ・ママで賑わっていて、しょうみ野球観戦より楽しそうだ。大人は大人でライトのポール際にある"Red Barn Cafe"で楽しめる(チームロゴにも描かれている"赤い納屋"風のバー)。フィールドの方を向いているカウンター・シートに座って観戦するもよし、仲間とテーブル席でワイワイするもよし。これだけ至れり尽くせりな球場を用意できるのなら、MLBのアフィリエイトに入らずともインディペンデントの球団を誘致すれば十分やっていけるわけだ。
 ちなみにこのチームのオーナーは同じリーグのヨーク、サザン・メリーランドも所有しており、この3チームの球場や設備は非常によくにている。例えばメリーゴーラウンドなんかはヨークにも全く同じものが同じ場所にあってちょっとしらけてしまう。
行き方:ランカスターは18世紀の独立戦争の際、1日だけ合衆国の首都になったことがある由緒正しき町。名前の由来はイギリスの都市ランカスターから。都市名だけではなくランカスター家の紋章である「赤薔薇」も町のシンボルとして輸入され、町のニックネームはズバリ"Red Rose City"。ペンシルヴェニア州の東南部に位置し、ここら辺りはアーミッシュの集落が多いことで有名。Capitol Trailways のバスでニューヨーク、フィラデルフィアからアクセスできる。また隣町ヨークへはバスで40分。球場はダウンタウンの北西、Prince St. 沿いのRoss St. からFrederick St. の間に位置する。ちょうどダウンタウンの中心とアムトラックの駅(Capitol Trailways Bus のディーポも兼ねている)の中間くらいで、どちらからも球場まで歩いて15分ほど。またダウンタウンとアムトラックの駅を循環しているトロリーバスも球場の正面でとまる。
観戦したゲーム(1):
2008.07.03 Lancaster Barnstomers vs. York Revolution

ヨーク・レヴォリューション
球場:ピープルズバンク・パーク
所在地:ペンシルヴェニア州ヨーク
開場:2007年
収容人数:7,312人

photo by 球場巡礼

 本来ならヨークとランカスターは同時にアトランティック・リーグに参入する構想だったが、ヨークは財政的な問題でランカスターより2年遅れのデビューとなった。ランカスターに"Red Roses"があったように、ここヨークでは"White Roses"が戦前から住民の野球欲を満たしてきた。ヨークとランカスターの対戦は英国の薔薇戦争にちなんで"Wars of the Roses"と呼ばれ、サブウェイ・シリーズをもしのぐ時空を越えた代理戦争に発展していた。しかし、1969年のシーズンを最後に当時ダブルAイースタン・リーグに所属していたホワイト・ローゼズは活動を休止。以降、2007年にレヴォリューションが誕生するまでの38年間、ヨークに球音が響くことはなかった。全然ベースボールらしくないチーム名は英国との独立戦争(英語ではThe American Revolution)においてヨークが重要な都市であったことから名付けられた。なお、レヴォリューション立ち上げの際にはかつてホワイト・ローゼズでプレイしていたという縁で殿堂入りの名三塁手ブルックス・ロビンソンがシンボルとして担ぎ出され、現在でも共同オーナーの一人に名を連ねている(球場のメインゲートの前の広場はブルックス・ロビンソン・プラザと呼ばれており、ファンにサインをするロビンソンの銅像が建っている)。
 球場はちょうどダウンタウンと住宅街の境目にあり、赤煉瓦造りの重厚なエントランスは古い建物が保存されている町並みによく調和している。ヨークとランカスターは同じオーナーグループによって運営されており、球場のデザインは基本的にはほとんど同じ。まるで一卵性双生児のような両者は「ペンシルヴェニアのマナカナ」と呼ばれ、素人がパッと見ただけではどっちがどっちか判別つかないほど良く似ている。構造はダブルデックのグランドスタンド+オープン・コンコースで、フィールド・レベルのはじっこのセクションは観戦しやすいように座席がバッターボックスの方に向いている。外野にはラワン(芝生席)やグループ用のパーティ・エリア、メリーゴーラウンド完備のキッズの遊び場などがあり、ゲームを見ても見なくてもそれなりに楽しめるように出来ている。落ち着いた配色のインテリアやシートも高級感があっていい感じ。ランカスターとの決定的な違いはレフトポール際にそびえるミニ・グリーン・モンスター。本家Fenway Parkのものより6インチ高いらしく、野球場の外野フェンスとしては最も高いというのが自慢。本家と同じく手差しのスコアボードも備えており、裏のコンコースから作業の様子が丸見えなのはご愛敬。球場としての完成度はかなり高い。ちなみにこの球場では花火などのイベントがあると通常の入場料に加えて数ドルの追加料金が上乗せされる。最近ってそーゆーシステムが主流なの?
行き方:ヨークはペンシルヴェニア州の東南部に位置する中都市で、隣町のランカスターと共に独立戦争の際、一時的に合衆国の首都にもなった。名前の由来はイギリスの都市ヨークから。都市名だけではなくヨーク家の紋章である「白薔薇」も町のシンボルとして輸入され、町のニックネームはズバリ"White Rose City"。Capitol Trailways のバスでニューヨーク、フィラデルフィアからアクセスできる。またランカスターへはバスで40分。
 球場はダウンタウンの中心部の少し北、George St. とNorth St. のコーナー辺りがエントランスになっている。North St. に沿って鉄道が走っており、球場は鉄道の北側になる。Capitol Trailways のディーポもGeorge St. とNorth St. のコーナーからすぐ。
観戦したゲーム(1):
2008.07.02 York Revolution vs. Newark Bears

チャールストン・ダーティ・バーズ
球場:アパラチアン・パワー・パーク
所在地:ウエスト・ヴァージニア州チャールストン
開場:2005年
収容人数:4,500人

photo by 球場巡礼

 球場は21世紀型シングルAクラスのスタンダードとも言える規模で特に立派であるというワケではない。オープン・コンコース、ノスタルジックなレンガ装飾、場内が周遊できる構造などの「近代ボールパーク三原則」をキッチリ満たしているので普通に居心地は良い。特徴はライトポール付近にある赤レンガ造りの倉庫ビルディング。古い建物を改装して球場の一部として使うのはボルティモアの"Oriole Park at Camden Yards"以来ちょこちょこ見られる手法だが、ここも定石通り建物内にはチケット売り場や球団オフィス、チームストア、レストランなどが入っている。壁面にペイントされたレトロなボールパーク・サインがカッチョイイ。1塁側にだけ1階が売店、2階がラグジュアリースイートになっているスタンドがある。外野にはスタンドはなく細いコンコースが1本通っているだけ。何故かスコアボードの下に2列ほどの座席が設えてあるのだが、それは2005年に解体された旧球場から持ってきたシートだとの事。チームロゴやカラーにもなっている金色のドームを持つキャピトル(州会議事堂)はライトの向こうにピョコっと頭をのぞかせている。この球場には"The Toast Man"と呼ばれる名物ファンが存在する。ピッチャーが三振を奪うと「持参したトースターで焼いたトーストをバラ捲く」という空前絶後の荒技の使い手らしいのだが、残念ながら私が見たゲームでは来ていなかった。その日は朝10:30試合開始だったので、トーストマンもさすがに自宅で朝食を食べていたのかも…。
 なお、このチームは2019年まではシングルAサウス・アトランティック・リーグに所属していたが、2020年のオフに断行されたマイナーリーグ再編の結果MLB傘下から放り出され2021年からアトランティック・リーグに所属している。アトランティック・リーグ初年度はMLB傘下時代の"West Virginia Power"のままで参戦したがシーズン終了後に"Charleston Dirty Birds"に改名した。
行き方:州都チャールストンはウエスト・ヴァージニア州の西側に位置する州内最大の都市で70〜80年代にはトリプルAインターナショナル・リーグがフランチャイズを置いていた事もあるベースボール・シティ。球場はダウンタウンの中心、タウン・センター・モールと呼ばれるショッピング・モールからWashington St. を南東方向へ歩いて15分ほど。巨大な病院に隠れていてなかなか見えないが、通りで言うとWashington St. & Morris St. がメイン・エントランスになっている。球場のある辺りがダウンタウンのサウス・エンドだと思って良いだろう。ショッピング・モール前からシティ・バスでも行けるようだが、バスに乗る程のキョリでもない。
観戦したゲーム(1):
2006.04.26 A South Atlantic League : West Virginia Power vs. Greensboro Grasshoppers

ロング・アイランド・ダックス
球場:フェアフィールド・プロパティーズ・ボールパーク
所在地:ニューヨーク州セントラル・イスリップ
開場:2000年
収容人数:6,013人

photo bu 球場巡礼

 ニューヨークのベッドタウン、ロング・アイランド初のプロ野球チームであるダックスの誕生と共にオープンした球場。オープンから2010年までは"Citibank Park"と呼ばれていたが、2011年から新たなスポンサーを獲得し現在の名称になった。イス席だけで6,000席のキャパがありビデオ・スクリーン装備のスコアボード、2層のグランドスタンド(2階席はスイートのチケット・ホルダーのみが入れる)、全席セパレート・タイプのハネ上げ椅子などこのリーグの新球場であるならさも当然であるかのようにダブルAクラス並のグレードを備えている。ヘンピな場所にあるにもかかわらず毎試合アベレージで6,000人以上を集め、オープン以来ずっとリーグのアテンダンス・レースでトップをひた走る。ショボくれたトリプルAなど裸足で逃げ出す程の人気で独立リーグといっても全く侮れない。
 アヒルのクチバシの形をした笛を「ブーブー」と鳴らして応援するのがキッズにウケているようだが、ゲームにあきたガキ共がむやみやたらに笛を吹きまくり、至る所でブーブーやかましいのが少々うっとおしい。ファンが多いという事は親子連れが多いという事なので、静かに野球を見たい人はちょっと落ち着けないかも。
行き方:ロング・アイランドはマンハッタンの東側に浮かぶ巨大な島。マンハッタンからMTAが運営するLong Island Rail Roadが島の各方面に伸びている。球場の最寄り駅はRonkonkoma線のCentral Islip(セントラル・イスリップ)駅。ペン・ステーションから1時間ちょいで行ける。運賃はオフ・ピークのラウンド・トリップ(往復)で$16.50。本数は1時間に1本ぐらいだが深夜でも走っているのでナイトゲーム終了後でもマンハッタンへ帰れる。(03年6月現在)
 球場は駅のかなり南に位置し、歩いて約45分ほどかかる。行き方は難しくない。駅前のLowell Ave. を南へ行き、途中でBelt Dr. へ入る(球場への案内標識が出ている)。右手にゴルフ場、左手に廃墟となった工場を見ながらひたすら歩くと右手に球場の照明が見えてくる。駅から公共の交通機関は、多分、ない。
観戦したゲーム(1):
2003.06.27 Long Island Ducks vs. Newark Bears