アイスホッケー用語集


NHLを頂点とする北米のアイスホッケー・リーグに関する小ネタ的な基本用語をご紹介します

photo by 球場巡礼

1対1のファイトはホッケーの重要な見せ場のひとつです
Pechanga Arena San Diego (San Diego, CA) - 2018


 
アイスホッケー 北米ではアイスホッケーの事を単に"Hockey"と言う。発音は「ハッキー」に近い。ベースボールと同じでその起源には諸説あるが、一般には1875年にモントリオール(カナダ ケベック州)にあるマッギル大学の学生が様々なローカル・ルールを統一したのが近代ホッケーの始まりとされている。一般的にシーズンは寒くなってくる10月から始まり4月まで半年間続く。当時はポロやラクロスなどと同じくローカル・スポーツの一つに過ぎなかったが、NHLが北米中に拡大されたのをきっかけに世界の寒い地域に広まった。
ナショナル・ホッケー・リーグ "National Hockey League"の略でカナダ、ケベック、アメリカの3ヶ国にまたがる世界最高レベルのプロフェッショナル・リーグ。1917年にカナダ東部の5チームでこじんまりとスタート。チームの破産、倒産、解散やライバル・リーグの吸収など紆余曲折を経て徐々に拡大し、現在では北はモントリオールから南は常夏のマイアミ、砂漠のフェニックス、カリフォルニアまで北米中に31チームのフランチャイズを擁する巨大なリーグに成長した(2020-21年シーズンからシアトルのチームが加わり32チームとなる)。
31チームは"Stanley Cup"と呼ばれる伝統の優勝カップを目指してリーグ戦、トーナメント式のプレイオフを戦う。シーズンはプレイオフを合わせると10月初旬から5月下旬までの長期に及ぶ。選手は北米だけでなくロシアやヨーロッパ(特に東欧・北欧)出身者も多く、名前の発音やカタカナ表記が非常に難しい。NHLの選手は"NHLer"と表記される事が多い。
2004-05年シーズンは選手会とオーナーが揉め、北米四大スポーツでは史上初のシーズン丸ごと中止という快挙、いや暴挙をやってのけた。2017-18年シーズンの1試合あたりの平均観客数は17,446人。全31チーム中13チームがホームゲームを全試合ソールドアウトにし、19チームが98%以上の満員率を誇る。
スタンレー・カップ NHLのチャンピオン・チームに与えられるお椀(カップ)。現在のものは2代目で初代はトロントの殿堂博物館(Hockey Hall of Fame)に展示されている。カップは1892年に時のカナダ総督フレデリック・アーサー・スタンレー卿が寄贈し、当初はアマチュア・チャンピオンに与えられていた。NHLのチャンピオン・チームにカップが与えられるようになったのは1926-27年のシーズンから。カップを獲得したチームの選手は自動的に一晩だけカップを好きにしていい権利を与えられ、アイデアを駆使した数々の爆笑使用法が告白されている。
オリジナル・シックス オリジナル・シックスとは1942-43年シーズンにNHLに加盟していた6チームの事。決してNHL創設時のチームではないのでお間違いのないように。大恐慌や第二次世界大戦の影響で他のチームが活動停止を余儀なくされた中において、それを乗り越えて存在したチームとしてリーグでは最も格式高く重鎮的な存在。故にこの6チーム同士の対戦は他のカードよりも一層の盛り上がりを見せる。チームは以下の通り。
 ・ Montreal Canadiens
 ・ Toronto Maple Leafs
 ・ Boston Bruins
 ・ Detroit Red Wings
 ・ New York Rangers
 ・ Chicago Blackhawks
エクスパンション・シックス NHLは1942年から25年間もの長きに渡りオリジナル・シックスの時代が続いたが、1967-68年シーズン、ついに拡大路線に乗り出した。そしてその時に新しく創設された6チームがエクスパンション・シックスと呼ばれる6チーム。格的にはオリジナル・シックスにまだまだ及ばないが、カナダやアメリカ北東部のローカル・スポーツだったホッケーが全国的に広まるきっかけを作ったチームとして評価されている。チームは以下の通り。
 ・ Los Angeles Kings
 ・ Minnesota North Stars(現在のDallas Stars)
 ・ Oakland Seals(消滅)
 ・ Philadelphia Flyers
 ・ Pittsburgh Penguins
 ・ St. Louis Blues
エクスパンション・シックス NHLは2003年11月22日のオイラーズ対カナディアンズ戦をリーグ初の屋外公式戦としてエドモントンの"Commonwealth Stadium"で開催した。"Heritage Classic"と銘打たれたこの試合には57,167人のファンが集まり、公式戦としての史上初の試みは大成功を収めた。それ以降しばらく屋外試合は鳴りをひそめていたが、2007-08年シーズンから"Winter Classic"としてレギュラー化し、基本毎年元日に1試合のみ開催されるようになった。
初の屋外試合となった"Heritage Classic"は"Winter Classic"に名を変えたと思われていたが、2010-11年シーズンに突如復活し、第2回としてカルガリーの"McMahon Stadium"にてフレームス対カナディアンズ戦が行われた。どうやら"Heritage Classic"はカナダ国内のイベントとして"Winter Classic"とは切り離されて存続される模様。
また、NHLに触発されたマイナーやジュニア、NCAAでも屋外試合が活発に行われるようになり、野球場やフットボール・スタジアムに限らず近年は毎年どこかでなんらかの屋外試合が開催されている。
ゲーム・ワン NHLは1997年、1998年、2000年の3度、"Game ONe"と銘打ったシーズン開幕シリーズを日本で計6試合開催している。これはNHLが初めて北米以外で開催した公式戦だったがその結果「日本ではホッケーは金にならない」という事実が明らかになったので、今後NHLの公式戦が日本で開催される事は未来永劫ないと思われる。
<日程と来日チームと会場>
 ・1997.10.04-05 Vancouver Canucks / Mighty Ducks of Anaheim@代々木競技場
 ・1998.10.10-11 Calgary Flames / San Jose Sarks@代々木競技場
 ・2000.10.07-08 Nashville Predators / Pittsburgh Penguins@さいたまスーパーアリーナ
冬季オリンピック 1998年の長野冬季オリンピックからNHLerが各国の代表として参加することが認められた(オリンピック期間中のNHLは全休)。もちろんアイスホッケーという競技を世界中に喧伝するのが目的であったが、ファンにとっては普段NHLでは絶対見る事のできない"Dream Team"を一挙に数カ国見れてしまうという、まさに夢の祭典にふさわしいイベントとなった。
特にカナダ、アメリカ、ロシア、チェコ、フィンランド、スウェーデンの6強が参加した決勝リーグはドリーム・チームの上をゆく"Dream League"として大いに盛り上がった。しかし、ホッケー発祥の地カナダは引退間際だったとはいえ史上最高のプレイヤー、ウェイン・グレツキーを擁しながら3位決定戦でテーム・セラニ&サク・コイブ率いるフィンランドに敗れメダル無しに終わってしまった。この大会の金メダルは当時NHLで最強のゴールキーパーだったドミニク・ハシェックとこれまた当時最強のフォワード、ヤロミール・ヤーガーが大車輪の活躍をしたチェコ、銀メダルはパヴェルとヴァレリのブレ兄弟、アレクセイ・ヤシン、セルゲイ・フェドロフと点取り屋を揃えたロシアが獲得した。
その後2014年のソチ大会(ロシア)までは毎回NHLerが出場したが、2018年のピョンチャン大会(韓国)には派遣が見送られた。次回2022年の北京大会(中国)への派遣は今のトコロ明言されていない。
カナダ・カップ 1976年に初めてカナダで開催されたホッケーの国際大会。プロのトップ選手によって構成されたカナダ、チェコ=スロバキア、フィンランド、スウェーデン、アメリカ、ソ連の当時世界6強ナショナル・チームがガチンコの死闘を繰り広げた。特にカナダ対ソ連の激しい戦いは既に伝説になっている。1976年の第1回以降、81年、84年、87年、91年の計5回開催された後、大会は"World Cup of Hockey"と名を変えカナダの手から離れていった。2004年に開催されたあと長らく休止となっていたが突如2016年に復活しカナダのトロントにて開催された。ルールはオリンピックや世界選手権を統括するIIHF(国際アイスホッケー連盟)の国際ルールではなくNHLルールで行われる。と言うのもワールド・カップはNHLの主導で開催されるからである。野球のWBCのようなものと考えてもらって差し支えないだろう。
ワールド・ホッケー・アソシエイション "World Hockey Association"略。1972~79年まで存在した、NHLに対抗した最後のメジャー・プロフェッショナル・ホッケー・リーグ。7シーズンのみの短命に終わったがリーグ消滅後Edmonton OilersHartford Whalers (現Calolina Harricanes)、Winnipeg Jets (現Phoenix Coyotes)、Quebec Nordiques (現Colorado Avalanche)の4チームが1979-80年シーズンからNHLに編入されている。またボビー・ハル(ブレット・ハルのお父さん)やゴーディー・ハウ、ウェイン・グレツキー、マーク・メシエと言ったレジェンド達もこのリーグでプレイしていた。
アメリカン・ホッケー・リーグ "American Hockey League"の略でNHL傘下のマイナーリーグのひとつ。1936年創設で2018-19年シーズンは31チームで構成されている。マイナーリーグの中ではトップ・レベルとされており、野球で言うところのトリプルAにあたる。現在所属する31チームの全てがNHLのチームと選手育成契約を結んでおり、運営は自前だが選手は親球団から供給される。チーム運営は野球のトリプルAに比べるとかなり脆弱でチームの移転はしょっちゅうある。
アメリカンと言うものの現在カナダにもBellville Senators(オンタリオ州ベルヴィル)、Laval Rocket(ケベック州ラヴァル)、Manitoba Moose(マニトバ州ウィニペグ)、Toronto Marlies(オンタリオ州トロント)の4チームが置かれている。
イースト・コースト・ホッケー・リーグ "East Coast Hockey League"の略称として使われていたがいつの間にやらECHLが正式名称となっていた。1988年にたった5チームで創設されたが2003年に解散した同業のWCHL(West Coast Hockey League)を引き継ぐカタチで吸収すると以後急速に拡大。2013-14年シーズン終了後にはまたしても同業のCHL(Central Hockey League)をも吸収し、2018-19年シーズン現在27チームで構成されている。イースト・コーストとは名ばかりでフランチャイズは五大湖周辺、アメリカ南部、フロリダ、カリフォリニアまでアメリカ全土に広範囲に広がる。レベル的にはAHLの下と認識されており、野球のマイナーリーグで言うとダブルAに相当する。ほとんどのチームがNHLおよびAHLと選手育成契約を結んでいるが、全ての選手がNHLから派遣されているわけではなく、チームが独自に個別契約している選手もいる。チームの運営はAHL以上に危うく、シーズン開幕直前やシーズン中に脱落する綱渡り的なフランチャイズも少なくない。
※NHLと選手育成契約を結んでいるAHL、ECHLの他にSPHL (Southern Professional Hockey League) やFHL (Federal Hockey League) といったマイナーリーグもあるがこちらはNHLとは一切関係のない独立リーグ。つぶれない程度に細々とやっているがチームの脱落、リーグ間の引き抜き、移転は頻繁にある。
カナディアン・ホッケー・リーグ "Canadian Hockey League"の略。上記のマイナーリーグとは違いこちらは16〜20歳までのジュニア選手が所属するカナダ国内最高レベルのジュニア・リーグ。覚えにくい正式名称があるのだが、後述するJunior A/B/C と差別化するために普通は"Major Junior"と呼ばれている。全60チームが所属している世界最大のホッケー・リーグでもある。あまりにもチーム数が多いので地域別に以下の3リーグに分割されている。
 ・ Western Hockey League
 ・ Ontario Hockey League
 ・ Quebec Major Junior Hockey League

カナディアンと言いつつも実際には国境を接するアメリカの各州にもフランチャイズが置かれており、所属している選手もカナダ人だけではなく、アメリカ人やヨーロッパからの輸入選手もいる。NHLにドラフトされる選手の半数以上はこのリーグでプレイしており、若い選手にとってはNHLへの登竜門的な存在。18歳になると有望選手はさっそくNHLからドラフトされるが、基本的にはドラフト後も経験を積むためにギリギリの年齢までジュニアでプレイすることが多い。
各チームの運営は非常に安定しており、地元ファンとの繋がりは密接にして強固。カナダではマイナーリーグよりもジュニア・リーグの方が圧倒的に支持されているようで、Calgary Hitmen(WHL)やOttawa 67's(OHL)などの人気チームは1試合平均で約1万人近く集める。リーグは近年拡大路線を取っており、AHLが撤退していったアトランティック・カナダ諸州の主要都市やトロントやヴァンクーヴァーなどの大都市近郊をターゲットにエクスパンションを続けている。
選手の中には野球のマイナーリーグと同じようにNHLerの息子や兄弟が多く在籍している。また日本関係では日系カナダ人選手もちらほらとロースターに名を連ねている。
選手の供給源はCHLの下部組織であるJunior A/B/C や地域の年齢別少年リーグでプレイしている子供達で、毎年決まった時期にドラフトが行われる。外国人選手は人数制限が設けられており、カナダ人選手とは別のインポート・ドラフトで指名される。
ウエスタン・ホッケー・リーグ "Western Hockey League"の略。現在22チームが所属し、フランチャイズはブリティッシュ・コロンビア州、アルバータ州、サスカチュワン州、マニトバ州、アメリカのワシントン州、オレゴン州に分布する。ヴァンクーヴァーやカルガリー、エドモントン、シアトル、ポートランドなどの大都市にもチームを置いている。
オンタリオ・ホッケー・リーグ "Ontario Hockey League"の略。現在20チームが所属し、オンタリオ州の他にアメリカのミシガン州、ペンシルヴェニア州に分布する。オンタリオ州ブラントフォード出身のウェイン、キース、ブレントのグレツキー3兄弟はいずれもこのリーグでプレイし、3人全員が1シーズン100ポイント以上を記録している。また元日本代表の日系カナダ人桑原ライアン春男は1989~92年までOttawa 67'sでプレイしていた。
ケベック・メイジャー・ジュニア・ホッケー・リーグ "Quebec Major Junior Hockey League"の略。現在18チームが所属し、ケベック州の他にノヴァ・スコシア州、ニュー・ブランズウィック州、プリンス・エドワード・アイランド州に分布する。ケベック州はフランス系名選手の産地として知られ、マリオ・ルミュー、パトリック・ロワ、マルティン・ブロデューア、レイ・ボークらは全員QMJHLで凄まじい活躍をしてNHLへ進んだ。
メモリアル・カップ そのシーズンのカナダ最強ジュニア・チームに授与されるカップ。ジュニア選手はとりあえずこれの獲得を目標に日々プレイしている。1983年から現在のフォーマットになり、WHL、OHL、QMJHLのそれぞれのチャンピオン・チームと会場を提供するホスト・チームの4チームで"Memorial Cup Final"を争う。メモリアル・カップの開催地はNFLのスーパーボウルのように何年か前から決められており、現在は3つのリーグが順繰りで受け持っている。地元にしてみれば単純に計算して60年に一度の祭典となるため、期間中は町自体がジュニアとは思えないような盛り上がりをみせ、ホスト・チームのシーズン・チケットはそのシーズンだけは驚異的な売り上げを記録するらしい。
ジュニアA/B/C カナダのジュニア・リーグは野球のマイナーリーグのようにしっかりとレベル別に分けられており、前述したメジャー・ジュニア(CHL)を頂点とする三角形を形成している。CHLの下にはジュニアA、その下にはジュニアB→ジュニアCと呼ばれるレベルのリーグが広がっている。これらのチームやリーグはカナダの至る所、そこら中のスモール・タウンにちらばっており、町のスケート場のような施設で公式戦を行っている。入場料はジュニアAでだいたい$10.00前後。チームによってはチーム・グッズを販売してがんばっているトコロもあるが、だいたいは入場券すらなく、アリーナに来るのはスカウトや選手の関係者(家族・友人・恋人など)が大多数を占める。もちろん毎試合1,000人以上を集める人気チームも存在するが、これは非常にレアなケース。
どんな名の知れた選手でもだいたいは15歳でこのレベルの地元チームからスタートし、まずはCHLにドラフトされる事を目標にプロ選手生活を始める(野球のマイナーリーグのように徐々に昇格してゆくのではなく、どのレベルから始めてもとにかくCHLに入れば勝ちとなる)。例えばデトロイト・レッド・ウイングズの元キャプテン、スティーヴ・アイザーマンはなんと11歳でジュニアAのNepean Raidersに入団、そこで5シーズンプレイして16歳の時にOHLのPeterborough Petesにドラフトされている。そしてピーターボロで2シーズンプレイしたのち、1983年のドラフトでデトロイトから1位指名されたのはご存知の通り。11歳でジュニアA入りと言うのは例外だが、カナダ人ならだいたいどんな選手でも似たような経緯をたどってNHLにたどり着くわけだ。ただし近年は情報網が発達してきたのでCHLからドラフトされる前にジュニアAの時点でNHLから直接ドラフトされるケースも出てきている。
ナショナル・カレッジエイト・アスレティック・アソシエイション "National Collegiate Athletic Association"の略。NCAAはアメリカの大学スポーツを統括する組織で、Men's Hockey(男子アイスホッケー)はフットボール、男子バスケットボール、ベースボールに次ぐ人気競技と言われている。NCAAの1部リーグであるディビジョン1でプレイしている学生のほとんどはアメリカやカナダのジュニア・リーグでのプレイ経験があり、その実力やレベルはマイナーリーグに匹敵する。
ジュニア選手の中には日程的にキツく、試合数も多いメジャー・ジュニア(CHL)でのプレイを避けてホッケーの名門大学進学を選ぶ選手もいる。例えば日系カナダ人のポール・カリヤはメジャー・ジュニアには行かずアメリカのメイン大学に入学、わずか1シーズン半プレイしただけでアナハイムから1位指名を受けた(弟のスティーヴ、マーティンも同じくメイン大学に進学した)。
男子ホッケーの全米大学チャンピオンを決める大会の準決勝・決勝戦は男子バスケットボールの"Final Four"に対抗して"Frozen Four"と呼ばれ、毎年NHLクラスのアリーナで開催される(もちろんチケットは入手困難を極める)。驚くべき事に2010年のFrozen FourはNFLデトロイト・ライオンズの開閉式屋根付きフットボール・スタジアム"Ford Field"で開催された。男子ホッケーの公式戦はほとんどが大学の小規模なアリーナで行われるが、オハイオ州立大学やネブラスカ大学オマハ校などの人気チームはキャパ10,000人以上のアリーナをホームとしている。